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Record Details


くるり 学(まなぶ)の 牛津録
Record #: 01

Title: 「退屈な町」

Issued on: 2001年11月
Last modified: 2001年11月

メルマガで発行したモノを、加筆修正して、随時ここにアップしていきます。



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◎編集後記&あいさつ

 初めまして、発行人のくるり学(まなぶ)です。いやー、やっとのこと、創刊号発刊となりました。まだ、登録者数も増加中ですが、すぐさま飛びついてくれた読者の方に、できるだけ早めに届けた方がいいかなということで、見切り発車です。これからしばらくの間、お付き合いくださいませ。

 くるり学、現在オックスフォード在住で、せわしなく研究している真っ最中、溜まった鬱憤を晴らすべくメルマガ始めちゃいました。何となく、日記のような、小説のような書き出しになっちゃいましたが、オチが見えない所は許して。夢を基本に妄想も入ってますが、地名とか、そういうのは全て実名です。色々おいしい店だとか、面白い話だとかも、届けていこうかなと夢は膨らむばかり。 (ひょっとして、このまま小説形式で続けちゃったりして、と思ってると、次号はエッセイっぽくなりそうです…)

 メールで質問など送って下されば、文章の中でちょこちょこ応えていこうと思ってますので、皆さんどしどしメール下さい。個別に返信できる自信は余りないです(汗)。

by Kururi
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      !!無断転載厳禁!!     
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発行者名:くるり 学 (kururi@lycos.co.uk)
マガジン名:英国留学 牛津録
発行周期:ほぼ隔週刊(不定期って申請したのに[泣])
発行人サイト:http://members.tripod.co.uk/kururi/
(C)M.Kururi, 2001. All rights reserved.
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
発行しています。http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000080277)





SIDENOTES




Body

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■DOMI|MINA■  くるり学 の                ■■■■
■ NVS|TIO ■          牛津録           ■■■■
■ILLV|MEA ■        oxford  record         ■■■■
■ |VVV| ■                第一録     ■■■■
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●第一録「退屈な町」

 なんて退屈な町なんだ。
 11月頭の肌寒い夕暮れ。若い奴らは口々にこうしゃべりながら、しぶしぶ
と手元のコーヒーを飲み干し、同じように退屈なスターバックスを出ると、お
決まりの場所へ移動していく。おそらくパブかクラブか。何ともやる気なさそ
うだ。
 ハイ・ストリートにあるスター・バックスは、この町では比較的あたらしい
喫茶店だ。店内はコーヒーの臭いで充満する。クロワッサンの匂いもする。イ
タリアンのフリをしてるけど、売ってるテイストはむしろフレンチで、深煎り
の筈のエスプレッソは大して苦くない。日本で最近出来た奴より、値段+味の
面で少しはまし=リーズナブルと言えるけど、他の喫茶店に較べ、とりわけ何
かが、飛びぬけていい訳じゃない。ソファがあることを除いて(これがもの凄
く居心地いいんだけど、滅多に空いてるの見たことない。シット)。
 僕はそこで、まだ昨日の残り香が漂う頭にヤミクモなコーヒーを流し込んで、
それでもまだ、ふらふらと漂うような有様だった。

 昨日の夜、友達に誘われて飲みに出かけた。午後10時くらいのことだ。近
くのパブに携帯で呼び出されて、のこのこ首を出しに行ったはいいが、すぐに
パブを出て「友達の所に行くぞ」と言う。ケーキやクッキーを作って皆で食べ
るんだとか。ビールやワインが揃っていれば、それなり上機嫌になる僕は、別
段、気にすることもなくホイホイとついて行った。一昨日の深酒がまだ頭に残
ってフラッとしていたのだけど。
 まだ11時を回ったばかりで、僕は、ビールを片手に他の奴らの作業を眺め
ながら、日本語と英語の入り混じったヘンテコな会話を楽しんでいた。電子レ
ンジがチンと鳴って、イギリスの濃厚なバターが、とろりと溶け出す。その香
りを包み込むように、お湯で溶かしたチョコレートが芳潤な匂いを放つ。誰か
が乾燥した植物の塊を、ハーブ、ハーブと言いながら楽しそうに刻んでいく。
チョコレート・マフィンには合いそうだ。焼けるまでに、大体三十分くらいか
な、と。
 出来上がりを待つ間、でっかい居間でダラダラと横たわりながら煙草を吸う。
この国では禁煙を押し付けてくるフラット(アパート)が増えてきていて、な
かなか室内で吸えないので、こういう場所は珍しいのだ。白い天井を眺めたり、
取り留めのない話をしながら、けっこう気分良く吸えていた。そしたら、鳥の
巣のような頭をした、トリスが「これ吸う?」と言って、スペシャルなモノを
差し出してくる。意味も分からず、ま、煙草ならいいか、と思いながらプカプ
カ吸って、ガンジャであることに気が付いた。こっちで手に入るものは、値段
が高くて質がよくないとモッパラの噂だ。そもそも自分の体にあまり合わない
ってこともあり、こっちに来てからほとんど吸わないようにしていた。約二週
間前、ロンドンの警視庁であるスコットランド・ヤードは、この植物の所持だ
けじゃ逮捕しないとの方針を固めていたので、実質、そんなに危ない物ではな
くなってしまったんだけど、何かこうやっぱりアヤシイ物には適度に抵抗があ
る。と、少し遠慮しながら、少し頂く。でも、僕は普通の煙草の方がいい。煙
草の方が健康に悪いらしいけど、何て考えながら両方プカプカ。
 いつのまにか、出来上がったクッキーとマファンは居間に運び込まれていて、
皆の手元で熱々と声を出させる。一口二口、食べて暫く後、トリスが話し冗語
になり、キャサリンが眠そうに笑ってるのを見て、理解した。こいつら、この
デザートまでスペシャルにしやがった! しかも結構食べてしまった? クッ
キーは美味しかったんだけど、どうも、こう、体が重くなって、んで、遂に、
うとうとと寝始めてしまった。起きたのは、あくる日の昼間だった。

 起きてからトリスと分かれ、駅の向こう側のボトリーにあるPC量販店に、
デスクトップ用の部品を買おうと出かけていった。中に入って、まだふらふら
になってる自分に気付きながらも、何とか意識を繋ぎ止めつつ、欲しい物を探
したがなかった。じきに、黒人のセキュリティ系の店員がやってきて、「May 
I help you?」なんて聞いてくるもんだから、「ああ、ただあの、部品探し
てたんだけど、無かったんだ、うん」と頑張って誤魔化したら、質問をやめて
どこかへ去っていった。店内に入ってからの記憶の順序が可笑しくなっている
のに気付く。時間感覚が可笑しくなり始めてる。ひょっとしたら、目なんかク
リクリ回ってるかも知れない。ばれた? 「まずいな、ちょっと」と思い、何
気に外へ出て、ここスターバックスへ流れてきた。そう、流れてきた。僕は空
気に流され、灰色の空を漂ってきた。コーヒーを飲みにはるばるスターバック
スまで(んなアホな)。スタバからどこをどう通ってきたか曖昧モコな状態で、
ようやくモニターに向かうことが出来た。そして、今、打ち込んでいる僕がこ
こに居る。まだ妙に眠い。

 なにもわざと退廃的な事を書こうと思ってる訳じゃない。これは本当に夢な
のかも知れない。ただ……、ただ……ありふれた現実を、ほんの少しのスパイ
スを加えて、書いてみようと思う。画面はいつの間にか真っ青になっていて、
「一般保護エラー」の文字が点滅していた。

 ああ、僕はまだ夢の中にいるのかも知れない。


(了)

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